安全保障輸出管理は、「技術士」の手で

またまた、「世界のモノ作り、ニッポン」の信頼を根底から揺るがす事件が報道されている。
「日本のモノ作り技術」の高さは定評があるが、それが闇市場で不正に取引され、世界の安全を脅かしているという評判が海外のメディアでも広く報道されていることを、皆さんはどれ程の深刻さで受け止めておられるのだろうか。
そもそも、もっと厳しい輸出管理の必要性を米国をはじめとする世界の人々に知らしめてしまった張本人は、我が国からの共産圏向けの不正輸出、あの忌まわしい「東芝機械ココム違反事件」であった。
この事件は「東芝機械事件」という名前で呼ばれているが、単なる一企業の問題ではない。
冷静な世界の世論から見れば、日本が官民こぞって自由資本主義陣営の安全保障を脅かした、まさに国辱的な事件だったのであった。
自由資本主義というのは、あくまでも基本ルールの遵守を前提として自由にやってよろしい、という大原則があることを全く分かっていなかった新参者の日本という国家がしでかした大失態であった。
その反省を踏まえて厳しい輸出管理体制の構築が当時の通産省の主導で進められた。
しかしあれから20余年たった現在、一向に改善されない現実がまたまた私達の目の前に現れてきてしまった。
国民一人一人が、「日本は世界に対して非常に申し訳ないことをしてしまった」という反省と罪の意識をしっかり持てなかったこと、メディアがそれを十分にフォローできなかったことが、今もって大きな禍根となっている。
一応、国家に代わっての監督責任を負っている経済産業省は、それなりの厳しい対応を執っている(即ち、違反企業の告発、行政指導など)ようには見受けられるが、民間企業を具体的に指導する当事者能力を全く備えていないため、一向に実質的な成果に繋がらないのは誠に歯がゆいことである。
「テロ支援国家、核開発国家に対して日本が陰で暗躍し、自らの利益に走っている」という海外からの批判に対して、あなたの会社は正面を切ってきっぱりと反論できるでしょうか。
北朝鮮の拉致がけしからん、アルカイダがどうの、平和憲法国家日本うんぬんと口ではいくらきれいごとを並べても、やっていることは汚いことばかりだ」と言われてしまう。
実際に、正真正銘の日本メーカーの銘板がついた動かぬ証拠が闇取引の現場で数限りなく挙げられている。
「キャッチオール規制を導入した」、「厳しい輸出管理を徹底している」など表向きで体裁の良いことを並べても、その現実は20年前と一向に変わっていないのではなかろうか。
いかに高い品質、技術レベルを誇ってもそれが、世界の平和を脅かしているのだと他人から言われた時に、私達日本の誇りある技術者はどう顔向けができるのだろうか。 輸出管理は世界の安全保障のために必要であり、その遵守は日本人の一人一人の名誉にも関わる、待ったなしの非常に重要なことなのである。
責任ある人間が一つ一つ自らの手できちんと管理することを義務つけられおり、自由資本主義社会コンプライアンスの基本問題である。
人に任せてしまって、「やったはず」とか「やらせています」は責任者の会見での常套コメントであるが、結果責任を問われる現代社会では自らの無能を表明する以上の何ものでもない。
今の日本が正にその状態に置かれている。もし、その現実をご自分の目で直に確かめたいという方々には、英文のウエッブサイトをお薦めする。
例えば「Did Japan Know About Libya Nukes?
ここでいかにも頼りない答弁をしている高官は、前の内閣総理大臣、福田康夫というのも皮肉なことではありませんか。
透明性の確保が未成熟な日本社会では、責任ある人達がこれらの議論を表ざたにすることをあえて避けてきた。
知らないのは日本国民ばかりで、海外では日本が「核技術・関連資機材の闇取引」に深く係わっていることは、最早常識になってしまった。
そして、私が今ここで強調したいのは、「輸出管理は技術者の問題である」ということ、そして技術と法律の両方に明るい「専門の技術者」が、厳正な目と澄んだ倫理観に照らして自らの企業活動を見張らなければならないということなのである。
多くの日本企業の「輸出管理最高責任者」は、形だけ立派な肩書きを就けてはいるが、技術のことは全然素人で分からず、下まかせでハンコだけ押している場合が多い。
しっかりと法律に照らして管理をしなければならない「技術判断」が日本社会では放任されている。そのためにこれらの忌まわしい闇取引事件が発生し続けているのであろう。
21世紀の「モノ作りニッポン」は高度な技術を誇るだけでは不足であり、各企業の技術者は、社会全体にとって最も重要な「安全保障輸出管理」の問題について、技術のスペシャリストとしての責任をもっともっと果たさなければならない。
なかでも「技術士」は文部科学大臣公認の資格で、それぞれの専門分野において、最も高い倫理観と専門技術力を備えていることが保証されている貴重な人たちだ。
今こそ、その力を存分に活用して、真の「モノ作りニッポン」としての名誉を挽回できるような社会的貢献を果たしていただきたいものである。